<2005年4月10日付 毎日新聞PLATA(プラタ)より転載>
中小企業の「経営の見える化」めざし活動
ITコーディネータ多摩協議会事務局長 田中 渉さん
「町工場にIT(情報技術)を導入して近代的な感覚の企業に脱皮させたい」---こんな思いでITコLデイネーターとして第二の人生を送っているのは、ITコーディネータ多摩協議会事務局長の田中渉さん(62)。
ライブドアや楽天などIT業界が話題になる中、田中さんのような仕事が町工場に新風を吹き込むのでは、と期待されている。
田中さんは、大学で電気工学を学んだ後、大手コンピューター会社に入り、主に機器開発などに携わってきた。
55歳になったとき、「このまま60歳ぐらいまで勤めていても、独り立ちは難しくなるばかり」と思い切ってリタイアし、コンピユーター教室で指導を始めた。
その後「経営者が高齢化する小規模企業にも情報技術の恩恵を広め、60歳すぎても働きたい人たちのためのネットワークを広めたい」と考えていたところ、2001年に経済産業省と情報処理振興事業協会により、中小企業へのIT導入をサポートする「ITコーディネータ」の資格認定制度がスタートした。
早速、その資格をとり、町工場などでのIT導入を図る活動を始めた。現在、全国で約5000人の有資格者がいるという。
田中さんは、地元の横浜、川崎を中心にした中小企業の経営者らが参加する異業種交流会などに出かけては、企業経営へのITの導入を働きかけている。
中小企業の中には、年間100億円の売り上げがあっても、40代の役員全員がパソコンを使えないというところもある。
そして町工場の多くが、まだIT化とは無縁の前近代的な経営が行われているという。 そうした町工場の経営者に、ITを活用して経営を革新するというのはどういうことか、どんなメリットがあるのかなどを分かりやすく説明している。
そしてIT導入による今後の経営戦略、在庫管理の合理化などを、具体的な数字を示して、アドバイスしている。このIT化で在庫が50%削減されたり、製品の納期をきっちり守ることができるようになったというメリットがあるという。
といってもIT化はそれほど簡単ではなく、経営者と話し合いながら、企業の将来像を描き、それに合わせて必要なITシステムを組み立てていくので、3〜4年かかることもある。
町工場経営者への指導だけでなく、新しい人材を育てるため、多摩協議会の事務局長として、研修会を開いて若い人や希望者に、ITコーディネーターの仕事の内容を講義するなどの活動にも取り組んでいる。
田中さんは、IT化の良さは、共通の情報をデータベース化して、いつでも情報を共有できることという。
「経営の見える化」づまり「経営が見えてくるようになる」というわけである。
「私の培った技術で時代から取り残されている町工場が新しく生まれ変われることができれば、こんなうれしいことはないですよ」と話している。
【文・川鍋亮、写真・伊藤健治】